4:きっかけ、のち決断 窓の向こうが夜の|帳《とばり》に沈む頃、アルバの家ではいつもより豪華な食卓が準備されていた。椅子が一脚追加され、客人であるセラータは私の横で、両親と和やかに談笑している。急だったため一頭分ではないが、それなりの量を追加された肉が並んでいるさ… 2025-02-06かつて僕らは敵だった
3:尋常なる日常 「平原側は応援が行ってるから、アルバは俺と山側で迎撃な!」宿に駆け込んできたのは自警団の同僚で、獣人族の青年だ。途中で交戦したのか所々に泥や返り血が付いている。思ったよりも苦戦しているのかもしれない。「わかった、行こう」小規模とはいえ空から… 2025-02-06かつて僕らは敵だった
2:勇者の子孫と魔王の息子 「よく来なさった、気の済むまで滞在なさると良い。アルバ、宿に案内して差し上げなさい」「はぁい……じゃなくてさ」先ほどまでうつらうつらと船をこいでいたはずの村長は、思いの外はっきりした口調で話すとあっさりと男——セラータに滞在の許可をだしてし… 2025-02-06かつて僕らは敵だった
1:僕らの出会い 私アルバはとある国の、魔王が納める領地の端にある、小さな村で生まれ育った人間だ。魔王と言ってもおとぎ話に聞く勇者との戦いは遥か昔のお話で、今となってはただの領主。魔族の王様という職業でしかない。魔族の他に獣人、ドワーフ、エルフなど様々な種族… 2025-02-06かつて僕らは敵だった
0:かつて僕らは敵だった 「俺と一緒に旅に出ようよ、アルバ」そういって手を差し出したのは、魔王の息子の三男坊。私はずっと、この狭くて愛しい田舎の村で生きていくんだと思っていた。自警団の一員として獣や魔物から村を守りながら、たまに来る冒険者や行商人など旅人の世話を焼き… 2025-02-06かつて僕らは敵だった